日本には、古くから自然や人の心に宿る“見えない存在”を妖怪として語り継ぐ文化があります。
それは恐怖の象徴であると同時に、自然への畏れや人間の想像力を映し出す鏡でもあります。
本記事では、日本の妖怪一覧として、全国の伝説・民話・神話に登場する有名な妖怪を紹介します。
「天狗」「河童」「雪女」など誰もが知る存在から、地方に伝わる珍しい妖怪まで――その意味・特徴・由来を解説。
昔話に隠れた日本人の心をたどりながら、妖怪たちの魅力に触れてみませんか？
日本の有名な妖怪一覧
妖怪の姿や由来は、地方ごとの語りや時代の背景によってさまざまに姿を変えます。 本記事では、広く知られている代表的な説をもとに紹介していますが、 「地域によっては異なる話が伝わる」という点を前提にお楽しみください。
1 有名・代表的な妖怪（全国的に知られる）
- 天狗（てんぐ）
山岳信仰と結びついた妖怪・神格的存在で、赤い顔に長い鼻（または嘴）、山伏装束に翼を持ち、山中で修行者を試したり人里に悪戯するとされます。 - 河童（かっぱ）
川や池など水辺に棲むとされる水の妖怪で、頭の「皿」や甲羅、嘴を持ち、人や家畜を水中に引きずり込む一方で、農業の神格や水神と結びつけられることもあります。 - 鬼（おに）
角を生やし牙を持つ人型の怪物として描かれ、地獄で罪人を責める存在や、人食いの怪物として恐れられる一方で、節分の「鬼退治」など悪を象徴する存在としても知られます。 - 雪女（ゆきおんな）
真っ白な着物をまとった若く美しい女の姿で現れる「雪の妖怪」で、吹雪の夜に旅人の命を奪う話や、人間に恋をして共に暮らす伝承などが各地に伝わっています。 - ぬらりひょん
ひょうひょうとした老人の姿などで描かれる妖怪で、「つかみどころのないもの・得体の知れない存在」のたとえにもなっており、作品によっては妖怪たちの総大将として扱われます。 - 一反木綿（いったんもめん）
鹿児島県肝付町（旧高山町）に伝わる、長さ一反ほどの白い木綿が夜空をひらひら飛び、人に巻きついて襲うとされる布状の妖怪です。 - からかさ小僧（からかさこぞう）
古びた和傘が化けた付喪神で、一つ目に長い舌、一本足で跳ね回る姿が典型とされ、人を驚かす程度の妖怪として知られます。 - ろくろ首（ろくろくび）
普段は人間の女性と変わらない姿をしているが、夜になると首だけが異様に長く伸びる、あるいは抜けて飛び回るとされる妖怪です。 - 座敷童子（ざしきわらし）
主に岩手県など東北に伝わる、家の座敷や蔵に住む子どもの姿の霊的存在で、姿を見た者や棲みついた家に富や繁栄などの幸運をもたらすといわれます。 - のっぺらぼう
人間そっくりの姿で現れながら、顔に目・鼻・口がなくつるりとしている妖怪で、正体を現して人を驚かすが、基本的には実害を与えない存在として語られます。 - 油すまし（あぶらすまし）
熊本県天草地方の峠道に現れたとされる妖怪で、伝承では古く油を盗んだ者の成れの果てなどともされ、頭の大きな老人のような姿で描かれます。 - 砂かけ婆（すなかけばばあ）
奈良県や兵庫県などに伝わる、夜道などで人に砂を振りかけて驚かす妖怪で、正体は狸や狐ともいわれる「砂をかける音」の怪異として記録されています。 - 子泣き爺（こなきじじい）
徳島県山間部などに伝わる妖怪で、赤ん坊のように泣く声で人を誘い、抱き上げた相手にしがみついて石のように重くなり、押し潰してしまうと語られます。 - 火の玉
夜空をふわふわと漂う青白い火の球として目撃され、「人魂」と同様に人の魂が炎となって現れたものと信じられてきた怪異です。 - 鵺（ぬえ）
平家物語などに登場する正体不明の怪物で、猿の顔・狸の胴・虎の手足・蛇の尾を持つとされ、夜ごと不気味な声で鳴き都を騒がせた伝説上の妖怪です。 - 牛鬼（ぎゅうき／うしおに）
西日本各地に伝わる牛のような頭と怪物的な体を持つ妖怪で、主に海岸や水辺に現れ、浜辺を歩く人間を襲う「海辺で出会ってはならない存在」とされています。 - 百目（ひゃくめ）
体中に無数、あるいは百個の目を持つ妖怪で、眩しい昼間ではなく夜に現れ、人をじっと見つめたり目玉だけを飛ばして追いかける存在として水木しげるの著作などで紹介されています。
2 怪異・幽霊・化け物系
- お菊（おきく）
怪談「皿屋敷」に登場する女中。家宝の皿を失くした罪を着せられて殺され、井戸に投げ込まれたのち、夜ごと井戸の中から皿を「一枚、二枚…」と数えながら現れる幽霊として語られる。 - お岩（おいわ）
歌舞伎『東海道四谷怪談』で知られる武家の妻。夫・伊右衛門の裏切りと毒薬によって顔を崩され、殺されたのち怨霊となって夫や関係者に復讐する、日本でもっとも有名な幽霊の一人。 - 累（かさね）
茨城県・鬼怒川沿いの「累ヶ淵」に伝わる怪談の女の怨霊。夫に殺されて淵に沈められた女性・累（かさね）の怨みが世代を超えて人々に祟る物語で、円朝の怪談噺『真景累ヶ淵』などで広まった。 - 小豆洗い
夜、川や谷川のほとりで「ショキショキ」と小豆を洗うような音を立てて人を驚かす小さな妖怪。ほとんど害はないが、足を滑らせて川に落ちると危険とされる。 - 塗壁（ぬりかべ）
夜道に突然現れ、見えない壁のように行く手をふさぐ妖怪。押しても叩いても通れず、回り道をするか座って夜明けを待つしかないとされる。 - がしゃどくろ
戦場や飢饉で埋葬されなかった多くの死者の骸骨や怨念が集まり、巨大な骸骨となった妖怪。夜の野や村外れに現れ、人間を掴んで噛み砕くと伝えられる。 - 首なし武者
合戦や落城で命を落とした武者が、首を失った姿で列をなして現れる怪異。福井県・九十九橋の「首なし武者行列」の伝説が有名で、旧暦4月24日の丑の刻に現れ、見た者は死ぬと言われている。 - 提灯お化け
古くなった提灯に魂が宿った付喪神。片目と大きな口、長い舌を持つ姿で描かれ、夜道をふわふわ飛び回って人を驚かすが、基本的にはあまり害はないとされる。 - 化け猫（ばけねこ）
年月を経た猫や、人々の念を受けた猫が妖怪化した存在。人語を話したり人に化けたり、死者の霊を操るなどの怪異を起こすとされ、猫又伝承と重なりながら各地に多くの説話が残る。 - 犬神（いぬがみ）
犬の霊を呪術でしもべにしたとされる憑き物の一種。特定の家系（犬神筋）に憑いて代々使役され、人に取り憑いて病気や不幸をもたらすと信じられてきた。四国など西日本の民間信仰に多く記録が残る。 - 濡女（ぬれおんな）
濡れた長い髪と青白い肌を持つ美女の姿で現れ、川や海辺で人を誘い、水中に引きずり込むとされる水の妖怪。地域によっては牛馬を襲う存在としても語られる。 - 海坊主（うみぼうず）
夜の海に突如現れる、巨大な坊主頭の影のような妖怪。船の前に立ちはだかったり、船底を揺さぶって転覆させるとされ、漁師にとって航海の大きな不吉の兆しとされた。 - 船幽霊
海で命を落とした漁師や乗客の霊が現れたものとされる怪異。荒れた夜の海で船に近づき、柄杓を貸すように求めて船に水を入れ沈めようとするが、底の抜けた柄杓やザルを渡すと難を逃れられると伝えられる。 - 青行燈（あおあんどう）
百物語の最後に灯す青い行灯から現れるとされる妖怪。青白い灯りとともに女の姿の怪異が現れ、語り手たちに災厄をもたらすとされるなど、「怪談の語り過ぎ」への戒めとしても語られる。 - 火車（かしゃ）
葬列や墓場に現れ、罪深い者の遺体を奪って地獄へ運ぶとされる妖怪。燃えさかる車輪や炎をまとった猫・獣の姿で描かれることが多く、遺体を守るために通夜の見張りを立てる風習の由来ともされる。 - 骨女（ほねおんな）
骨だけになった死体が、美しい女の姿をとって現れる妖怪。男を誘惑して家に招き入れ、その生命力を吸い取るとされる怪談が知られており、正体が骸骨であることが後に露わになる。 - 青女房（あおにょうぼう）
青い着物をまとった背の高い女の姿で現れる妖怪。節分や大晦日の夜などに人家に現れ、囲炉裏端に座って人々の様子をじっと見ている存在として伝えられる。 - 白粉婆（おしろいばば）
顔中に白粉を塗りたくった老女の妖怪。冬の夜道や橋のたもとなどに現れ、人に白粉を勧めて近づき、驚かせたり不吉をもたらす存在とされる。
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