ケルト・ゲルマン系の魔女
ケルト神話では「魔女=Witch」というより“魔術的力を持つ女神・妖精・超常の女性”として語られることが多いため、ここでは伝承的に魔女的性質をもつ存在としています。
- モリガン(Morrígan) – アイルランド神話に登場する戦争・死・運命を司る女神。変身能力や予言を自在に操り、戦場でカラスの姿となって現れるため「戦の魔女」「破壊の魔女」とされることも多い。
- ニヴ(Niamh) – アイルランド伝承に登場するティル・ナ・ノーグ(常若の国)の妖精王の娘。厳密には“魔女”ではないが、異界の支配者として強い魔術的力(不老不死・幻術・次元を超える移動)を持つ存在として語られる。
- ブリギッド(Brigid) – ケルトの三重女神の一柱で、詩・鍛冶・癒し・火を司る女神。民間伝承では聖なる炎を操り治癒魔術を行う存在とされ、ドルイド系の魔術と深く結びつくため“魔術女神”として扱われることがある。
- カリャク(Cailleach) – スコットランドやアイルランドの伝承に登場する“冬の老女の魔女”。嵐・山・冬の支配者として恐れられ、大地を創造する女巨人として語られることもある。季節を司る強力な魔術的存在。
スラヴ・東欧の魔女
- バーバ・ヤーガ(Baba Yaga) – スラヴ民話に登場する代表的な森の魔女。鶏の脚で立つ小屋に住み、若者を試し、知恵を授ける一方で残酷さも持つ両義的な存在。東欧魔女像の中核的存在として再掲。
- ラダ(Lada) – スラヴ神話における美・豊穣・春を司る女神とされるが、その存在は学術的には議論が多い。後世のフォークロアでは、恋愛と美を操る“魔術的な女性”として再解釈されることがあり、魔女的な役割を持つ象徴として扱われる。
- ルサルカ(Rusalka) – スラヴの水辺の妖女で、溺死した女性の霊が変じた存在とされる地域もある。歌や魅了によって男性を水に誘い込むため、“水の魔女”のような役割を持つことが多い。
- サモディヴァ(Samodiva / Samovili) – ブルガリア・バルカン地方に伝わる森の魔性の女性精霊。風を操り魅惑の舞で男性を惑わす力を持ち、“森の魔女”または妖精・魔術師として扱われる。自然の守護者としての側面も強い。
中東・古代メソポタミアの魔女
- リリス(Lilith) – メソポタミア由来の“夜の女悪霊”。吸血・誘惑・新生児を脅かす存在として恐れられ、後にユダヤ神話でアダムの最初の妻とされる伝承につながる。ファンタジーでは「夜の魔女」として再解釈されることが多い。
- ラマシトゥ(Lamashtu) – 古代メソポタミアの実在する悪霊女神。妊婦や幼児を襲う“魔女的存在”として恐れられ、多くの護符や呪術で対抗された。七つの名を持つ強大な悪霊として文献に記録が残る。
- ナムタルの魔女(Namtar’s witches) – 死と疫病を司る神ナムタルに仕える“呪術的存在”。古代文書には「疫病を広める悪霊的魔術師」や「死の使い」として記述があり、人々は護符や祈祷で対抗したとされる。
- エンヘドゥアナ(Enheduanna)※誤称注意 – 実際には紀元前23世紀の女祭司であり、世界最初期の文学者。魔女ではないが、後世の伝承や創作で“星・月・儀式魔術の象徴”として扱われることがあるため、魔術と結びつけて語られることがある。
アジアの魔女(伝承・妖術師)
アジアの伝承では「魔女=Witch」という表現は稀で、妖術・呪術を操る女性、妖怪化した女性、仙女・妖狐など“魔女的存在”を一覧にしました。
- 妲己(だっき / Daji) – 中国殷王朝末期に実在したとされる紂王の妃。後世の『封神演義』では九尾の狐に憑依された魔性の美女として描かれ、残虐な妖術や誘惑で国を滅ぼした“妖狐の魔女”的存在となった。
- 白素貞(はくそてい / Bai Suzhen) – 中国の民間伝承『白蛇伝』の白蛇の妖精。人間の女性へ変化し、強力な法術・治癒・変身の力を扱う。恋愛悲劇の主人公で、妖術を使う“善なる魔女”の側面をもつ。
- 麻姑(まこ / Magu) – 中国道教の仙女で、不老長寿の象徴。海潮を操る力や霊薬に通じ、仙術を扱う存在として崇められる。魔女というより“強力な仙術師”。
- 玉藻前(たまものまえ / Tamamo-no-Mae) – 日本の伝承に登場する妖狐で、中国・インドの九尾の狐伝承と連続性を持つ。美貌と呪術で朝廷を惑わせた“狐魔女”として恐れられる。
- 葛の葉(くずのは) – 日本の狐の民話に登場する女性。安倍晴明の母として知られ、狐が人間女性へ化けた姿。子を守るため強い妖術や変化の力を持つ“妖狐女術師”。
- 鬼女紅葉(きじょもみじ) – 日本の伝説に登場する女鬼。信州戸隠山に住み、呪術と妖気で武士を翻弄したと語られる。“鬼であり魔女”のような位置づけの存在。
- 山姥(やまうば / Yamauba) – 日本の山に棲む老女の妖怪。超人的な力、呪術、変身能力を持ち、旅人を助ける場合もあれば喰う場合もある“山の魔女”として広く認識される。
- 磯撫(いそなで / Isonade) – 海辺に現れる日本の妖怪。巨大な腕で人をさらうとされるが、魔女というより“海の怪物”に近い。魔女リストとして扱う場合は要注意。
- 蛇婆(へびばば) – 日本各地の伝承に登場する“蛇を操る老女”の妖怪。または蛇女房の変化系など複数の説があり、妖術や呪いを扱うため“魔女的妖怪”とされる。
- 蘇妲己(そだっき / Su Daji) – 『封神演義』に登場する妲己の強化された魔性バージョン。完全に妖狐そのものとして描かれ、幻術・呪術・妖気を操る“究極の狐魔女”の象徴。
アフリカ・カリブ海の魔女
- マミ・ワタ(Mami Wata) – アフリカ西〜中部に広く信仰される水の精霊・女神。人間を富・美・魅了で誘惑する力を持ち、呪術的な加護と災厄の両面を併せ持つ“水の魔女”として描かれることも多い。
- オヤ(Oya / Ọya) – 西アフリカ・ヨルバ神話における嵐・稲妻・死の門を司る強力な女神。破壊と再生をもたらす力を持ち、風と嵐を操る姿から“嵐の魔女女神”として再解釈されることが多い。
- エズリ(Ezili / Erzulie) – ハイチ・ブードゥーの愛と美の女性Loa(霊)。人の心と運命に作用する魔術的能力を持ち、愛・官能・呪術を操る“魔女的霊”として信仰される。
- オバ(Oba / Ọbà) – ヨルバ神話の川の女神で、忠誠心と犠牲を象徴する存在。伝承には呪術・嫉妬・変身の逸話が含まれ、魔術的な側面を持つ“川の魔女女神”として扱われる。
- オビアの黒魔女(Obeah Women) – カリブ海地域(ジャマイカ、ガイアナなど)に伝わる呪術者で、病気治療・護符・呪詛・占いを行う女性たちを指す。植民地時代に“黒魔術”として恐れられ、魔女的存在として語られる。
世界の魔女たちは“文化の鏡”
世界の魔女たちは、まさに“文化の鏡”のような存在です。
魔女の姿は、決してただの“こわい存在”ではなく、
その時代の価値観、人々が抱えていた恐れや願い、祈りや智慧を映し出す象徴でもあります。
魔女たちの背景にある物語や信仰を知ることで、
神話や伝承の世界は一気に奥行きを増し、あなた自身の物語づくりや世界観にも深みが加わります。
もし気になる魔女がいれば、その名の由来や伝えられてきた神話をぜひ掘り下げてみてください。
きっと、新しい“気づき”と創造のヒントが見つかるはずです。
FAQ よくある質問
世界の有名な魔女にはどんな人物がいますか?
神話や伝承には、キルケー、メーデイア、バーバ・ヤーガ、リリスなどの有名な魔女が登場します。 古代神話から民話、歴史上の人物まで幅広く存在しており、地域によって特徴や役割が大きく異なります。
魔女の特徴とは何ですか?どんな能力がありますか?
魔女の特徴は文化によって異なりますが、一般的には「呪術」「占い」「変身」「薬草の知識」「霊的な力」などを持つとされます。 善悪どちらにも属し、物語では“知恵の象徴”として描かれることもあります。

Comment