魔女という存在は、時代や地域によって、まったく異なる姿で語られてきました。
癒し手として人々に寄り添った者、禁忌に触れた異端者、自然や精霊と交信する知識者。
その多様な姿は、今も言葉の中に静かに息づいています。
ここでは、各国に伝わる魔女の呼び名をはじめ、呪術や儀式、薬草や錬金術、精霊や使い魔、予言や闇の概念にまつわる語を集めました。
言葉の意味や背景に触れることで、魔女が恐れられ、同時に必要とされてきた理由が、少しずつ見えてきます。
物語や世界観に深みを与えたいとき、あるいは歴史や信仰の側面から魔女を理解したいときに、そっと手に取れる語彙として役立ててください。
魔女にまつわる言葉 一覧
ここで紹介している名前は、創作・文章表現のヒントとして気軽に楽しんでいただくことを目的としています。意味や由来には複数説があるため、興味があればご自身でも調べてみてください。背景を知るほど名前選びはもっと楽しくなります。
※正しい発音・意味等は辞書などでご確認ください。
1. 魔女の名称・呼称|各国に伝わる「魔女」を示す言葉
魔女そのものを指す言葉を集めました。 英語・ドイツ語・フランス語・北欧語など、地域ごとに異なる呼び名には、その土地の魔女観や信仰の違いが反映されています。魔女の肩書きや称号、存在そのものを表す語が中心です。
- witch(ウィッチ)
英語の「魔女」。呪術を行う者の一般的表現。語源は古英語の *wicce* などに遡る。 - wicce / wicca
古英語の魔女を指す語。wicce は女性の魔女、wicca は男性形とされる歴史的呼称。 - Hexe(ヘクセ)
ドイツ語の「魔女」。多くのゲルマン語派で同根語が使われる。 - Hex(ヘックス)
ドイツ系英語で「呪いをかける者」→転じて魔女。 - sorcière(ソルシエール)
フランス語の女性の魔女。 - bruja(ブルハ)
スペイン語の「魔女」。 - strega(ストレーガ)
イタリア語の「魔女」。 - vedma(ヴェドマ)
スラヴ系言語の女性の魔女(例:ロシア語)。 - vedmak(ヴェドマク)
スラヴ語派で魔女に対応する男性の魔術者(warlock/witcher 的役割)。 - sorginak(ソルギナク)
バスク神話・文化で魔女・呪術者を意味する語。 - rágana / ragană
バルト語派で「魔女」を意味する語(ラトビア語 / ルーマニア語などに見られる形)。 - ragana(ラガナ)
バルト語派で女性の魔女、呪術者を指す語。 - strix / striga / strigoi(ストリクス/ストリガ/ストリゴイ)
ラテン・ロマンス語派で夜の魔女・夜行霊的存在(魔女イメージと関連)。 - flátta / flagðkona(フラグトコナ)
古ノルド〜古英語系で怨霊・魔女的存在の語彙(史料に見られる表現)。 - hægtesse / haghetisse(ヘグテッセ)
古英語・古オランダ語で魔女を意味する言葉。 - hellirune / hellirûna(ヘリルーネ)
古ゲルマン語で「儀式的な占術者・魔女」に使われた語。 - völva(ヴォルヴァ)
古ノルド語で予言者・魔術者としての魔女的存在。 - spákona(スパコナ)
古ノルド語で予言者(女性)。魔女的伝統に含まれる語。 - fjölkynngi / fjölkynngiskona(フィヨルキンギ / フィヨルキンギスコナ)
古ノース語で「知識豊富な者」「知識を持つ女性」。魔術者・賢女として登場。 - noita(ノイタ)
フィンランド語で魔術師・魔女的存在を指す語。
2. 魔女の呪術・魔法|秘められた力を示す言葉
呪文、呪い、魔法行為そのものを表す言葉を集めました。 ラテン語・古ノルド語・ドイツ語など、儀式や秘術と結びついた語が多く、魔女の「力」や「行為」を象徴する表現です。
- Zauberei(ツァウバライ)
ドイツ語で「魔術・妖術(sorcery)」。魔法行為全般を指す語。 - Beschwörung(ベシュヴェールング)
ドイツ語で「呪文・召喚(incantation / conjuration)」。言葉で呼び起こすニュアンスが強い。 - maleficium(マレフィキウム)
ラテン語で「害をなす魔術/妖術(maleficium)」。魔女術が“害”と結びつく文脈で現れる語。 - sortilège(ソルティレージュ)
フランス語で「呪文・魔術(spell)」。美しい響きの中に妖しさが残る語。 - envoûtement(アンヴートマン)
フランス語で「魅了・呪縛(bewitchment)」。相手の心を絡め取るような“かけられた状態”を表す。 - hechizo(エチソ)
スペイン語で「呪文・魔法(spell / witchcraft)」。短く鋭い響きが出やすい語。 - maleficio(マレフィシオ)
スペイン語で「呪い/害を与える呪術(spell, curse)」。不吉さが前面に出る語。 - incantesimo(インカンテージモ)
イタリア語で「呪文・魔法(spell / enchantment)」。歌うような余韻が残る。 - feitiço(フェイチソ)
ポルトガル語で「呪文・魔術(spell)」。柔らかい響きの中に“術”の気配がある。 - toverij(トーファレイ)
オランダ語で「魔術・妖術(sorcery / witchcraft)」。古い絵本のような不思議さが出る語。 - tovenarij(トーフェナレイ)
オランダ語で「魔女術・魔法(witchcraft)」。語形が長く、儀礼語っぽさが出しやすい。 - trolldom(トロルドム)
北欧圏で「魔術・妖術(magic / wizardry)」を指す語(由来は古ノルド語 trolldómr)。冷たい森の気配が似合う。 - fjölkynngi(フィヨルキンギ)
アイスランド語で「魔術・妖術(magic / sorcery / witchcraft)」。硬質で神秘的な響き。 - trolleri(トロレリ)
スウェーデン語で「(超自然的な)魔法/手品(magic)」を指す語。日常語寄りの“魔”が出る。 - fortrylle(フォートリレ)
デンマーク語で「魔法をかける/魅了する(to enchant)」。“やわらかい呪い”の表現に使いやすい。 - zaklęcie(ザクレンチェ)
ポーランド語で「(オカルト的な)呪文(spell)」。“結ぶ”感じが出る語。 - kouzlo(コウズロ)
チェコ語で「魔法・呪文(magic / spell)」。丸みのある音で、童話にも怪談にも寄る。 - varázslat(ヴァラーシュラト)
ハンガリー語で「魔法(magic)」。“術式”のような硬い輪郭が出せる。 - vrajă(ヴラジャ)
ルーマニア語で「魔法・呪文(magic / spell)」。短く妖しい響きが残る。 - farmec(ファルメク)
ルーマニア語で「魔法の呪文/チャーム(magic spell, charm)」。“甘い毒”のニュアンスが作りやすい。

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