5. 自然現象・地名として名付けられた風
特定の地域や地形、気候条件によって繰り返し吹く風には、固有の名前が与えられてきました。
こうした風の呼び名は、単なる現象名ではなく、その土地の暮らしや自然観を映す言葉でもあります。
ここでは、実在する地名風・気象用語として定着している表現を中心に紹介します。
- やませ
東北地方の太平洋側に吹く、冷たく湿った北東風。 - からっ風(空っ風)
関東平野で冬に吹く、乾燥した強い北西風。 - 六甲おろし(ろっこうおろし)
六甲山地から大阪湾側へ吹き下ろす冷たい風。 - 伊吹おろし(いぶきおろし)
伊吹山から濃尾平野に吹き下ろす冬の強風。 - 比叡おろし(ひえいおろし)
比叡山周辺から京都方面へ吹く冷たい風。 - 広戸風(ひろとかぜ)
岡山県北部から吹き下ろす、局地的な強風。 - 清川だし(きよかわだし)
山形県庄内地方で夏に吹く、局地的な強風。 - 筑波おろし(つくばおろし)
冬に茨城南部~千葉北部で吹く北西風。 - 肱川あらし(ひじかわあらし)
愛媛県肱川流域で発生する、霧を伴う強い風。 - 那須おろし(なすおろし)
那須連山から吹き下ろす冷たい季節風。 - Bora(ボラ|クロアチア語/伊)
アドリア海沿岸に吹く、非常に冷たい北東風。 - Föhn(フェーン|ドイツ語)
山を越えて吹き下りる、乾いて暖かい下降風。 - Harmattan(ハルマッタン|英語)
西アフリカに吹く、乾燥した砂塵を運ぶ季節風。 - Levanter(レバンター|英語)
ジブラルタル海峡周辺で吹く、湿り気を帯びた東風。 - Chinook(チヌーク|英語)
北米ロッキー山脈東側に吹く、暖かく乾いた下降風。 - Santa Ana winds(サンタアナ・ウィンズ|英語)
南カリフォルニアで発生する、乾燥した高温の強風。
6. 神話・伝承に登場する風の言葉
風は古来、神や精霊、神話的存在として語られてきました。
ただの自然現象ではなく、「意志を持った存在」や「天からのメッセージ」として扱われることも少なくありません。
ここでは、風が人格や象徴として登場する神話・伝承由来の言葉をまとめています。
- 風神(ふうじん)
日本神話における風の神。風袋を背負った姿で描かれる。 - 志那都比古神(しなつひこのかみ)
日本神話の風を司る神。『古事記』『日本書紀』にも登場。 - 天つ風(あまつかぜ)
天から吹き降りるとされる神聖な風。和歌にも頻出。 - 風鬼(ふうき)
暴風などを司る鬼神。風の猛りとして伝えられる。 - 八風(はっぷう)
東西南北と四隅を表す仏教の風の概念。煩悩を吹き払う風とも。 - Boreas(ボレアス|古代ギリシャ語)
北風を司る神。冷たく猛々しい性質を持つ。 - Notus(ノトス|古代ギリシャ語)
南風の神。時に嵐をもたらす存在とされた。 - Eurus(エウロス|古代ギリシャ語)
東風の神。四大風神の一柱。 - Vayu(ヴァーユ|サンスクリット語)
インド神話における風神。生命の息とされる神格。 - Spiritus(スピリトゥス|ラテン語)
風・息・霊を意味し、神の息吹とも解釈される。 - Ruach(ルーアハ|ヘブライ語)
風・霊・神の意志を意味する語。聖書でも用いられる。 - Pneuma(プネウマ|古代ギリシャ語)
風・呼吸・魂を表す語で、哲学や医学用語としても使われる。 - Anemoi(アネモイ|古代ギリシャ語)
ギリシャ神話に登場する風の神々の総称。 - Auster(アウステル|ラテン語)
南風を司る神。湿気を含んだ重い風の象徴。

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