「有名な魔女」と聞くと、多くの人はリリスやキルケー、バーバ・ヤーガのように、
神話や昔話に登場する“強くて謎めいた存在”を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際には、魔女という存在は
神話・伝承・民話・文学・歴史上の人物・現代ファンタジーまで幅広く語られ、
その姿は時代と地域によって大きく異なります。
本記事では、世界の有名な魔女52名を厳選し、
・どんな能力を持つのか
・どの文化圏で語られてきたのか
・特徴や象徴としての意味
を紹介します。
あなたが探している「魔女の名前」や「世界観のヒント」がきっと見つかるはずです。
ヨーロッパ神話・伝承の魔女
- キルケー(Circe) – ギリシャ神話に登場する強力な魔女で、太陽神ヘリオスの娘。薬草と変身の魔法に長け、オデュッセウスの部下を豚に変えた逸話で広く知られる。
- メーデイア(Medea) – ギリシャ神話の名高い魔術師で、コルキスの王女。薬術・呪術に優れ、イアソンの冒険に協力した「アルゴナウタイ物語」で中心人物となる。
- ヘカテ(Hecate) – 夜・魔術・十字路を司るギリシャ神話の女神。魔女術の守護者として古代から信仰され、「魔女の元祖」とみなされる象徴的存在。
- モルガン・ル・フェイ(Morgan le Fay) – アーサー王伝説に登場する妖女で、優れた魔術師。癒しと呪術の両面を持ち、物語によって味方にも敵にも描かれる多面的な魔女。
- ヴォルヴァ(Völva) – 北欧神話・サガに登場する女予言者・魔術師の総称。セイズ(呪術)を操り、未来を見通す力を持つシャーマン的存在。
- グリーマ(Gríma) – 古ノルド語で「仮面」「フード」を意味し、北欧伝承で呪術を行う女性を指す場合がある語。特定の固有名としての魔女は確認されず、ここでは「女呪術師」の一般的表現として扱うのが正確。
- ニヴルヘルの魔女(Niflhel Witch) – 北欧神話において「ニヴルヘル」に特定の魔女は存在しないが、死者の国の深部には呪術的存在がいると再解釈されることがあるため、ここでは「死の国の地下領域に関わる呪術者」として伝承的イメージの魔女として扱う。
- セイレーン(Siren) – ギリシャ神話の歌声で人を惑わす魔性の存在。厳密には「魔女」ではないが、古代から魔女的な魅了能力を象徴する存在として扱われる。
- バーバ・ヤーガ(Baba Yaga) – スラヴ民話に登場する森の魔女。鶏の脚で立つ小屋に住み、若者を試練にかける恐ろしくも知恵深い両義的存在。
- 魔女ベルタ(Perchta / Berchta) – アルプス地方の冬の精霊で、善悪を裁く女神的存在。大晦日や12日の期間に現れ、人々の行いを見定める“冬の魔女”。
- ホルダ(Frau Holle) – ドイツの冬の女神で、善行者に祝福を、怠け者に試練を与える母なる魔女的存在。グリム童話にも登場し、豊穣と家内安全の守護者。
- 黒いアンナ(Black Annis) – イギリス・レスターシャーに伝わる青顔・長い爪を持つ恐怖の老魔女。丘の洞窟に住み、子どもをさらうとされた古いハグ(妖婆)の一種。
- グリンデル(Grindylow) – ケルト・イギリスの水辺の怪物で、子どもを引きずり込む存在。厳密には“魔女”ではなく水の精霊の凶悪種だが、魔女文化の中で「沼に住む女魔女」と再解釈される場合がある。
- ワルプルギスの魔女(Walpurgisnacht Witches) – ドイツの伝承で4月30日に行われる「魔女のサバト(集会)」に現れる魔女たちの総称。ブロッケン山での宴や悪魔との契約が語られ、ヨーロッパ魔女像の象徴となった。
- フリッグの魔女(誤称) – 北欧神話の女神フリッグは魔女ではなく、家庭・愛・予言の女神。後世の民間伝承で“魔術を使う母神”として魔女的に扱われた事例に基づく誤称。
歴史に実在した「魔女扱いされた人物」
- ジャンヌ・ダルク(Jeanne d’Arc) – 15世紀フランスの英雄。神の啓示を受けたと主張したため、イングランド側に「魔女・異端」として裁かれ処刑されたが、後に冤罪が認められ聖人に列聖された。
- マルガレータ・ピーター(Margaretha Peter) – 19世紀スイスの預言者的女性。宗教的狂信として告発され、悪霊憑きや魔術に関わったと疑われた。厳密には魔女裁判ではないが、“魔術的行為”を疑われた歴史的人物。
- アン・ボリン(Anne Boleyn) – イングランド王ヘンリー8世の2番目の王妃。政治的陰謀の中で敵対派閥により「魔女」「魅了によって王を操った」と中傷され処刑された。
- アリス・キテラー(Alice Kyteler) – 1324年アイルランド史上初の本格的魔女裁判の中心人物。富裕な女性で、黒魔術・悪魔崇拝の疑いをかけられ亡命した。裁判そのものは歴史的に有名。
- ティチューバ(Tituba) – 1692年セイラム魔女裁判で最初に告発された人物の1人。カリブ系出身の奴隷で、供述が裁判の暴走を加速させたとされる。
- アグネス・サンプソン(Agnes Sampson) – 1590年代のスコットランドで“魔女”として尋問された治療士。ノース・ベウィック魔女事件の主要人物で、魔術・降霊術などの罪で処刑された。
- マーガレット・アデリー(Margaret Aitken) – 1597年のスコットランド魔女狩りで多数の女性を告発した「偽証者」。後に嘘が露見し処刑された。魔女扱いというより「魔女判別者(witch-finder)」として問題視された人物。
- ペンデールの魔女(Pendle Witches) – 1612年イングランドで起きた大規模魔女裁判。アリソン・デヴァイス、エリザベス・デヴァイスら12名が告発され、多数が処刑された。「イギリス最も有名な魔女事件」とされる。
- マッティ・ウォレス(Mattie Wallace) – アメリカの地方史に登場する人物とされるが、確実な史料は非常に少なく、一般的な魔女裁判史には登場しない。民間伝承的扱いで、魔術儀式を疑われた女性として語られることが多い。
- アンナ・コールズガール/アンナ・ゲルディ(Anna Göldi) – 1782年スイスで処刑された女性。「ヨーロッパ最後の魔女」とされるが、現代では冤罪が認められ、魔女というより“社会的迫害を受けた女性”として再評価されている。

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