9. 禁忌・呪い・影の概念|恐れと畏敬を集めた言葉
呪い、禁忌、忌避すべき力を示す言葉集です。 恐怖だけでなく、「触れてはならない知識」や「境界を越える力」として語られてきた概念が中心です。
- taboo / tabu(タブー)
禁忌。触れること・行うこと自体が禁じられた対象や行為。 - prohibition(プロヒビション)
禁止。宗教規範や共同体の掟として定められた禁止事項。 - curse(カース)
呪い。害や不幸を招くと信じられた言葉・行為。 - hex(ヘックス)
呪い(主にドイツ系英語圏)。短い言葉で害を及ぼすという観念。 - malison(マリゾン)
フランス語由来の「呪詛」。祝福(benison)の対義語として使われた。 - ban / bann(バン)
追放・破門。共同体からの排除を意味する法的・宗教的語。 - excommunication(エクスコミュニケーション)
破門。宗教共同体からの正式な排除。 - anathema(アナセマ)
呪詛・忌避の対象。宗教的に断罪されたもの。 - heresy(ヘレシー)
異端。正統とされる教義から逸脱した思想や信仰。 - blasphemy(ブラスフェミー)
冒涜。神や聖なるものへの不敬な言動。 - impurity(インピュリティ)
不浄。宗教的に穢れていると見なされる状態。 - pollution(ポリューション)
汚染・穢れ。聖と俗の境界を侵す状態を示す概念。 - evil eye(イーヴル・アイ)
邪視。視線だけで害を及ぼすと信じられた力。 - jinx(ジンクス)
不運を招く呪い・忌み言葉。語源は古代の呪符名に遡る。 - maleficence(マレフィセンス)
害悪行為。魔女裁判文脈で“害をなす力”として使われた語。 - maleficium(マレフィキウム)
害を与える魔術。中世ラテン文献で魔女術を指す重要語。 - witch-mark(ウィッチ・マーク)
魔女の印。魔女裁判で身体に探された“証拠”とされた痕跡。 - damnation(ダムネーション)
永遠の罰・破滅。宗教的断罪の最終形として語られる。 - shadow self(シャドウ・セルフ)
人間の内なる抑圧された側面(心理学用語だが、影の概念として象徴的に用いられる)。 - abyss(アビス)
深淵。破滅や底知れぬ闇を象徴する語。
10. 信仰・異端・魔女裁判|歴史と結びついた言葉
魔女狩り、異端審問、宗教的迫害に関連する言葉をまとめました。 魔女がどのように恐れられ、排除されてきたかを知るための歴史的語彙です。
- witchcraft(ウィッチクラフト)
魔女術。魔女が行うとされた呪術行為の総称として、法令や裁判記録で用いられた語。 - sorcery(ソーサリー)
妖術・魔術。宗教的文脈では「不正な魔法行為」として区別されることが多い。 - heresy(ヘレシー)
異端。正統教義から外れた思想や信仰を指し、魔女信仰と結びつけられた。 - inquisition(インクイジション)
異端審問。カトリック教会が異端を取り締まるために設けた制度。 - heresy trial(ヘレシー・トライアル)
異端裁判。魔女裁判がこの枠組みで行われることもあった。 - witch trial(ウィッチ・トライアル)
魔女裁判。魔女とされた人物を裁いた司法・宗教的手続き。 - witch hunt(ウィッチ・ハント)
魔女狩り。集団的な告発・迫害を指す歴史用語。 - Malleus Maleficarum(マレウス・マレフィカルム)
『魔女に与える鉄槌』。15世紀に編まれた魔女裁判の理論書。 - demonology(デモノロジー)
悪魔学。魔女・悪魔・契約の体系を理論化した神学分野。 - pact with the devil(パクト・ウィズ・ザ・デヴィル)
悪魔との契約。魔女告発で頻繁に用いられた概念。 - sabbath(サバト)
魔女の集会とされた行事名。裁判記録や悪魔学書に登場。 - black mass(ブラック・マス)
黒ミサ。キリスト教儀礼を冒涜する儀式として告発に用いられた語。 - confession(コンフェッション)
自白。拷問下で引き出されることも多く、裁判の中心的要素。 - testimony(テスティモニー)
証言。近隣住民の告発が魔女裁判の発端となることが多かった。 - ordeal(オーディール)
神判。水責めなど、神意によって有罪無罪を決めるとされた試練。 - burning at the stake(バーニング・アット・ザ・ステイク)
火刑。魔女裁判で用いられた代表的な処刑方法。 - canon law(カノン・ロー)
教会法。異端や魔女に関する判断の法的基盤。 - secular court(セキュラー・コート)
世俗裁判所。地域によっては教会裁判と併存した。 - superstition(スーパースティション)
迷信。魔女信仰や民間呪術が批判的に呼ばれた際の語。 - persecution(パーセキューション)
迫害。魔女裁判全体を歴史的に総括する際に用いられる語。
言葉から見えてくる、魔女という存在の輪郭
言葉を辿っていくと、魔女という存在の輪郭が、ゆっくりと浮かび上がってきます。
そこには、癒しと破壊、知恵と禁忌、信仰と迫害といった相反する価値が、同じ文化の中で共に在ったことが映し出されています。
名称や呪術の語に触れるたび、魔女が生きていた世界の空気や、人々の恐れと願いが伝わってくるはずです。
これらの言葉が、魔女という存在をより立体的に感じ取るための、静かな手がかりになれば幸いです。
FAQ よくある質問
魔女を表す言葉にはどんなものがありますか?
代表的なものに英語の「Witch」、ドイツ語の「Hexe」、フランス語の「Sorcière」があります。北欧では古ノルド語の「Völva(予言を行う女性)」、スラヴ圏では「Baba Yaga」のように固有名詞として語られる場合もあります。呼び名の違いは、魔女が予言者、呪術師、異端者のどれとして見られていたかを示しています。
魔女の呪術や魔法を表す具体的な言葉には何がありますか?
呪術を示す言葉には「Hexerei(ドイツ語:魔女術)」「Seiðr(古ノルド語:予言と魔術)」「Maleficium(ラテン語:害を及ぼす魔術)」などがあります。これらは物語用の造語ではなく、実際に呪いや秘術を指す概念として使われてきた言葉です。

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