アフリカの雷・嵐の神々(Africa)
西アフリカのオリシャ信仰から中部アフリカ、南部アフリカまで、雷・稲妻・嵐を通して「正義」「王権」「創造」を表す神々。多くが人々を裁き、共同体を守る守護神として信仰されています。
- Shango(シャンゴ)
ヨルバの雷の主神
ナイジェリア・ヨルバの代表的オリシャで、雷・稲妻・火・正義・王権を司る神。歴史上のオヨ王を神格化した存在ともされ、二つ刃の斧「オシェ」を象徴とします。 - Amadioha(アマディオハ)
イグボ族の雷・稲妻の神
ナイジェリア東部のイグボに伝わる雷と稲妻の神で、違反者を雷で打つ「正義の神」として恐れ敬われます。白い雄羊を象徴とし、赤色と太陽とも結びつけられます。 - Nzazi(ンザジ)
コンゴ神話の雷神
中部アフリカのコンゴ神話において、雷と稲妻を司る霊的存在。創造神ンザンビ・ア・ムプングに従う精霊の一つで、暴風や雷鳴を通じて人々に力と畏怖を示します。 - Xevioso / Heviosso(ヘビオッソ)
ダホメ・エウェの雷神
ベナンやトーゴ沿岸地域で崇拝されるヴォドゥンの雷神。雷・稲妻・雨を司り、嘘つきや盗人を罰する「義の神」として恐れられます。しばしばシャンゴと同系統の雷神として語られます。 - Kiwanuka(キワヌカ)
ブガンダの雷・裁きの神
ウガンダのブガンダ王国で、雷と稲妻、戦いと裁きを司る強力な神的存在として伝えられます。巨大な力と軍事的な性格を持ち、ハンマーを携えた雷神として描かれることがあります。 - Umvelinqangi(ウンヴェリンカンギ)
ズールーの天空・雷の創造神
ズールーやンデベレ伝統宗教で、世界の始まりから存在する天空神・創造神とされ、「雷と地震の神」とも呼ばれます。雷鳴の声で人々に語りかけ、怒ると大地を揺らすと信じられています。
南アジアの雷・雨・武威の神々(South Asia)
インド亜大陸から周辺地域にかけての雷・雨・戦いの主神たち。モンスーンの雨や稲妻、霊的なヴァジュラ(雷)を通して、宇宙秩序や王権、悟りの力を象徴します。
- Indra(インドラ)
ヴェーダの雷と戦いの主神
古代ヴェーダにおける最重要神の一柱で、デーヴァたちの王。天空・雷・稲妻・嵐・雨・川の流れと戦争を司り、雷霆ヴァジュラ(vajra)を武器として竜ヴィリトラを討ち、大地に雨を取り戻したとされます。 - Parjanya(パルジャニヤ)
雨と雷の神
リグ・ヴェーダに見える古い雨神で、雨・雷・稲妻・雲を支配し、大地を潤して作物や生き物に生命力を与える存在とされます。後にはインドラの異名・側面と見なされることもあり、農耕と豊穣に不可欠な雷雨の力を人格化した神です。 - Vajrapani(ヴァジュラパーニ)
霊的雷(ヴァジュラ)を象徴する守護神
名は「ヴァジュラ(雷・金剛杵)を手にする者」を意味し、仏教における初期からの菩薩・護法神。釈迦如来の力を体現する守護者として、右手に雷霆ヴァジュラを掲げて立つ姿で表され、雷の破壊力を“無明を打ち砕く悟りの力”として再解釈した存在です。 - Raja Indainda(ラジャ・インダインダ)
バタック族の雷神
スマトラ島のバタック神話に登場する雷の神で、他の神々に仕える使者・斥候の役割も担うとされます。雷鳴とともに神々の意志を地上に伝える存在であり、しばしば神ソリパダの子とされます。
東アジアの雷神:中国の雷・稲妻の神々
中国では、雷・稲妻・雷鳴は天の意思や正義の裁きと結びつけられ、複数の神格または精霊によってあらわされてきました。以下はその代表例です。
- 雷公(Léi gōng / レイゴン)
中国神話・道教で最も知られる雷神。太鼓と槌を打ち鳴らして雷鳴を発し、悪人や邪霊を撃つ「天の執行者」。
古い伝承では鳥の嘴・爪をもつ鬼神に近い姿で描かれ、後世には威厳ある武神的イメージに統一された。 - 電母・电母(Diàn mǔ / ディエンムー)
稲妻を司る女神で、多くの伝承で雷公の妻または相棒とされる。
手にした“光る鏡”で稲光を走らせ、雷公が打つべき対象を照らし出す役目を担う。 雷光が先に走り、雷鳴が遅れて聞こえる理由を説明する神話的存在でもある。 - 豊龍・雷龍(Fēng lóng / フォンロン)
「雷を起こす龍」または雷の主と解釈される古い雷神的存在。
文献によって名称が揺れ、“雷龍(レイロン)”・“奉龍”など複数の表記が見られる。
雷公と同一視される例もあり、雷電を司る龍神として扱われることがある。 - 夔(Kuí / クイ)
古代の伝説に登場する一足の怪獣または神獣で、太鼓の音を響かせて雷を起こす「雷獣」。
『山海経』などの古典に記述があり、雷の起源を語る神話的存在として扱われる。

Comment