7. 恥ずかしさ・気まずさを伝える古語と用例
「かたはらいたし」「はづかし」「こころもとなし」など、人間関係や社会的な立場で生じる気まずさや恥じらいを表す言葉に焦点を当てます。
- かたはらいたし
「見苦しい」「気まずい」「恥ずかしい」など、第三者のふるまいを見ていたたまれないと感じる時に使われる語。 - はづかし
「気後れする」「面目ない」「照れくさい」など、自分より優れた人を前にしたときの恐縮や恥じらいの感情を表す。 - こそばゆし
「くすぐったい」感覚の延長で、誉められたり注目されたりすることに対する照れや恥ずかしさを表す。 - あぢきなし
「つまらない」「不愉快だ」という否定的な感情を表すが、恥ずかしさや自己嫌悪の文脈で使われることも多い。 - こころづきなし
「心に付きたくない」という意味で、「不愉快」「気に食わない」感情。気まずさや羞恥を含むことも。 - をこがまし
「愚かしい」「出しゃばりだ」とされ、分不相応な態度をとったことへの自己批判や恥ずかしさが込められる。 - つつまし
「気がひける」「遠慮される」といった意味で、人前に出ることへの躊躇や控えめな気持ちを表す。 - なさけなし
「思いやりがない」という意味が本来だが、冷たい対応をされたことに対して羞恥や失望を覚える場面で使われることもある。 - はしたなし(端甚し)
中途半端だ、みっともない、気まずい。場違いな態度や不相応な行動で「恥ずかしい」「面目ない」気持ちを表す。 - まばゆし
「まぶしい」という意味から転じて、「見ていられないほど恥ずかしい」感情を含む。誉められすぎたときなどに使われる。
8. 無常観や「もののあはれ」を感じる古語
古典文学における感情表現の核心ともいえる、「あはれなり」「をかし」「さびし」などの語を通じて、日本人特有の美意識や無常観を紹介します。
- あはれなり
しみじみとした感情を呼び起こす語で、悲しみ・感動・共感などを含む。日本文学の美的感受性「もののあはれ」を象徴する語。 - をかし
「趣深い」「美しい」「面白い」などの意味。感性に訴える美しさや、自然や人生の機微を感じたときに使われる。 - はかなし
「あっけない」「頼りない」という意味で、人生の無常さや儚さを感じるときに使われる。和歌でも頻出の語。 - いとほし
「気の毒だ」「かわいそう」という意味から、無常観や人の不運への共感を含む感情として用いられることがある。 - しみじみ
心に深く染み入るような感動や寂しさを表す副詞で、「もののあはれ」に直結する表現として使われる。 - さびし
季節の移ろい、孤独、別れなど、人生の無常を感じさせる情景に多く用いられる語。自然とともに心情を表現する。 - ものぐるほし
我を忘れるほど感情が高ぶる様子を指し、激しい悲しみや驚きに対する感情の深さを象徴する語。 - あぢきなし
無価値感や虚しさを表す語で、人生のつまらなさ、どうにもならない世の中の理不尽さに対して使われる。 - むなし
「中身がない」「実体がない」といった意味から、心の空虚さや生の儚さを感じる表現に用いられる。 - おろかなり
「いい加減」「粗末だ」という意味だけでなく、「思いのほか心を尽くせない無力感」を示す表現としても使われる。
9. 内面的な葛藤や心理を表す古語
「こころうし」「こころづきなし」「こころもとなし」など、外に出せない心の揺れや葛藤を表現する古語をまとめます。
- こころもとなし
先行きが不安で落ち着かない気持ちを表す語。期待や不安が入り混じる複雑な心理に用いられる。 - こころづきなし
心に付きたくない=気に入らない、という意味で、嫌悪感や違和感を感じたときの内面的反応を示す。 - こころぐるし
自分や他者に対する痛ましさ・気がかりを含み、思いやりや自責の念といった心の痛みを含む。 - こころうし
「気が重い」「心がつらい」といった内面の葛藤や苦悩を示す語で、恋や人生への悩みにも使われる。 - こころざし
意志や思いの向かう先を表すが、成就しない願いとの葛藤や、報われない思いを示す文脈もある。 - あやしむ
不思議に思う、疑うという意味で、心の中で何かを測りかねている状態を表す語。迷いや不信感を含む。 - あいなく
「理不尽に」「つまらなく」という意味で、心がざわつくような不合理な感情や納得できない気持ちを表す。 - かたはらいたし(心理的用法)
他人の様子を見て内心いたたまれなくなるような感情。不快感や共感的苦痛も含む。 - いぶかし
「気がかりだ」「不審に思う」といった心の動揺や疑念の感情を表し、確かめたくなる心理を含む。 - おぼゆ
「自然に思われる」「思い出される」という語で、自分の意志とは別に湧き上がってくる感情を示す。
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